一人旅安全のしおり

「さらさの日記は面白いけど心配になる」という感想をいただきましたので、そのうちまとめようと考えていた、私流の安全対策をここに記すことします。これはあくまでこれまでの私の経験や誰かに聞いた話に基づく手法であり、「これをすれば絶対安全」ではありません。

まず最初に、安全とは、そして、リスクとは何かを考えます。その後、具体的に私が実践していることをご紹介します。

まず、旅の安全とはなんでしょうか?
それは、旅先で、死ぬとか、誘拐されるとか、レイプされるとか、ものすごい大怪我をするとか、ものすごい大事なものを盗まれるとか、そんな危ない経験をしなくて済むこと、と、ここでは定義したいと思います。そもそも、旅先じゃなくても、そんな経験したくないですね。

危険を避けること、それはリスク・マネジメントです。
私が大学を卒業してすぐに、企業のありとあらゆるリスクに関するアドバイスをする、リスク・マネジメント・コンサルタントとして就職することが決まった時、周りの友達は驚きました。「危ないことをしてばかりの、リスク・テイカーなさらさが、企業にリスク・マネジメントのアドバイスをするのか?」と。これは確かに一理あります。でも同時に、仕事をしていく中で、学んだのは、「リスクを正しく理解してそれぞれの対策を考えること」そして「その対策にはリスクの“受容”も含まれる」ということです。

「離婚の最大の原因は?」
「リスクを無くしたい」と言う人がいますが、それがビジネス・リスクであれ、旅のリスクであれ、リスクを0%にすることは無意味であると私は考えます。死ぬのが最大の危険だとして、そのリスクを「低減」する方法はたくさんあります。「毒かもしれないものは食べない」「故障している飛行機には乗らない」などは、おそらく多くの人がすでに実践していることでしょう。「車に轢かれるかもしれないから、一切外出しない」「大地震がいつ起きるかも分からないから、一生テーブルの下に隠れている」。これはどうですか。極端な例かもしれないですか、人は常にある程度リスクを「受容」したり、「左右を見て道路を渡る」などという対策でリスクを「低減」しているのです。ものすごく用心深い人がいると仮定して、一生テーブルの下に居たとして、近所で火事があって火が燃え移るかもしれません。じゃあ、テーブルの下に置かれた、特注の巨大な耐火金庫に一生閉じこもっていればリスク0%で絶対安全でしょうか。もはやそれで、生きている意味はあるのでしょうか。

私の叔父は、小学生の私にある日こんなことを言いました、「離婚の最大の原因は何か知っている?」と。小学生のさらさは考えます。「浮気?喧嘩?」。「正解は、結婚だよ。結婚しなければ、離婚しない」。なんとも夢のない話ですが、これは確かに一番確実な「リスクの回避」です。死ぬリスクを100%完全に避ける唯一の方法は、生まれないこと、または死んでしまうことになってしまいます。

どこまでリスクを受容するか
リスクの「回避」がいつも正解なわけではなく、ある程度の「低減」や「受容」で妥協する必要がある理由がわかって頂けたと思います。さて、ビジネス・リスクを考える時、『発生可能性』とその『影響の大きさ』、それから『対策に必要なコスト』を考えて「回避」「低減」「受容」のどんな対策をするか、分析することがあります。

メキシコに旅行に行くとしましょう。そこで、マフィア闘争に巻き込まれる、という状況を考えてみましょう。『影響』は大きいですね。多分、死ぬと思います。一番避けたい事態です。しかし、マフィアとのつながりもない一般観光客の私です。当たり前の観光客やメキシコ市民としての範囲だけを行動していれば、『発生可能性』は少なそうですね。ただ、マフィアのアジトや、彼らの行動場所を事前に把握して近寄らない、また、よっぽどマフィアグループ同士の闘争が加熱している時期であれば時期をずらすなどで、『コスト』をかけず、ある程度は「リスクを低減」できそうです。万が一闘争に巻き込まれた場合は、防弾チョッキを着ていれば命が守れるかもしれませんが、『発生可能性』の低さと、『コスト』の高さから、不要と判断します。

では、同じメキシコで、強盗に遭って財布と携帯を取られる、という状況を考えます。これは実際、私のメキシコ人の友達が何人も、経験した話を聞きました。昼間でも道端で突然腕を握られ、ナイフを突きつけられ、財布と携帯を渡すことになるということです。またはバスに乗っていると、バスジャックが発生し、運転手か一番先頭のお客さんの頭に銃が突きつけられ、バスの乗客全員は、携帯電話と財布を提出する羽目になるという手口も一般的です。お金を持っていると思われる外国人であることも考えると、『発生可能性』は大都市でかなり高そうです。『影響』はどうでしょう。これらの強盗の目的は、人殺しではなく、お金です。抵抗をせずに相手に満足のいく品を差し出せば、大きな怪我をすることもなさそうです。全財産を現金で持ち歩いていたら『影響』は大きいですが、必要最低限なお金を、複数箇所に小分けにして持っている私は、その分、『対策コスト』をかけずに、影響の「低減」をしています。移動を全てタクシー移動にしたら、道端やバスジャックによる強盗のリスクはかなり「低減」できます。しかし、タクシー強盗やタクシー誘拐という新たなリスクが発生します。『対策コスト』もまぁまぁ高くなりますね。

直感的な怖さと統計
メキシコへ行く予定日の数日前、メキシコ・シティの仲良しの友達が通勤に毎日乗っているバスでバスジャック強盗に遭いました。運悪く、一番前の席に座っていた彼女は、銃を突きつけられました。これでは、「バスの中の誰かが抵抗すれば殺される」という、恐ろしい気持ちになるだけでなく、財布からカードや大きいお札を抜き取って隠したりする余裕ももちろんありません。突然返事が来なくなった友人を心配していた私は、数日後、そんな事情で携帯を無くしたため連絡ができなかったのだと聞いて、メキシコ行きを中止にするか真剣に悩みました。「そんな危ない国に、行く意味はあるのか…。」

私が出した結論は、「メキシコで銃に打たれて死ぬ可能性よりも、日本で交通事故で死ぬ可能性の方が高いんじゃないか」ということです。直感的な恐怖が命を救うことももちろんあると思いますが、上記の例にもいろいろ記載したように、発生可能性を正しく理解して、何を怖がるべきかを理解することは大切ですね。

私がしている安全対策の例
【発生可能性の低減】
(1)その国の犯罪の特徴やケースを事前に勉強する

行く前に、外務省や地球の歩き方の安全情報で、観光客がどんな被害に遭っているかを知ります。どんな可能性があるかを知らずして、対策はできませんからね。

(2)新しい街に着いたらまず「危険ゾーン」を確認する
新しい街に着くと、まず、食堂のお姉さんでも、観光案内所でもよいので、絶対行ってはいけないゾーンが無いかを確認しましょう。中南米では特に、「昼間でも絶対に行かない方がいい地域」や「日が暮れたら地元民は絶対足を踏み入れない場所」なんていうのが、大きな街はどこでもあります。私はできるだけ、同年代の女性に聞くようにします。行かない方がいい場所は男女構わず同じ場合も多いですが、暗い道を1人で歩く尋常じゃない怖さとか、女性だからこそ気をつけていることとか、やっぱりあると思うので。「市場より南は、危ない」とか、「夕方はこの道は麻薬売人が多く、喧嘩も多いから避けた方がいい」とか、意外と昼間は安全そうな道でも、時間帯によって変わることもあります。

(3)たくさんの人と挨拶・会話をする

どこかの街に滞在するとき、顔見知りをたくさん作ること。彼らと会話すること。このことで、いろいろな地元の情報が入ってくるだけでなく、自分を守ってくれる人を増やすことにもなると、私は考えています。宿泊地の近くの商店やレストランの客引き、お互い顔を覚えて毎日挨拶をします。もし私が悪いことを企んでいるなら、みんなとおしゃべりして、挨拶して、仲間や友達がたくさんいるように見える誰かを、あえてターゲットに選びはしないと思うのです。もちろんスキがあるとも取れますが、多くの人の目がある方が、その分強盗失敗のリスクが高く思えるからです。一人、誰とも会話せずにコソコソ動き回っている目立たない誰かの方が、どちらかといえば狙いやすいと思うのです。

【影響の低減】
(1)お金やカードは持たない、また小分けにする
できるだけ持たない。滞在先の友達の家や、ホテルの部屋のどこかに隠すとか、持ち歩かない方法があるなら持ち歩きません。その日必要な分だけをポケットに、いざという時、強盗に渡すための数千円と使えないカードなどを入れたお財布をカバンに、靴や洋服の下に隠れるバックに大事なカードやお札、読みかけの本にもお札を1枚、歯磨きセットなどのポーチの底にもカードやお札を数枚などなど、どこに隠したか忘れるぐらい小分けにします。財布やかばんを無くしても、別のどこかにあるお金やカードで、家に帰ったり、助けを求める電話ができます。

(2)写真や大事な情報は、クラウドに保存する
携帯やカメラが壊れたり、盗まれたりしても、買い直すだけで済むように、できるだけのことをしておきます。このことにより、ヒッタクリに遭っても、ダメージがデバイス代金だけで済みます。パスポートのスキャンなんかも、クラウドにあると便利かもしれません。

(3)何かあったら絶対に抵抗しないと心に刻む
お金を無くしたら、また稼ぐことができます。パスポートやカードを無くしたら、時間とお金がかかるけど再発行できます。レイプされても生きていれば、アフターピルで妊娠は避けられます、中絶もできるし、心の傷は時間が少しづつ癒してくれるはずです。命だけは、無くしてたまるか。まだ行きたい場所、食べたいものがたくさんあるんじゃ。旅の写真を撮りためた一眼レフカメラをコロンビアで夜にヒッタクリに遭い、走って追いかけたら、ヒッタクリの仲間にナイフで腕をざっくり切られた日本人の少年にエクアドルで逢いました。取り返したカメラを手に、武勇伝のように語る彼の、包帯がまかれた腕を見ながら、私は、「今回は、すごく運が良かったね」と言いました。銃が出てきてバンと撃たれていても、 全然おかしくない状況です。殴られそうになったら、避けるとか、反射的に抵抗してしまうこともあります。でも、それが命取りになりかねない状況では絶対に、追いかけたり、取り返そうとしたりしないことが、命を守るための一番の方法です。

あとがき

カバー写真は、中南米を4か月共に旅した相棒です。小さなリュックに、鰹節、巻き寿司を作るまきすと、洋服を少し。小さなデジカメ。本を1〜2冊。歯ブラシ。石鹸1個。必要なものは、それだけだったんですね。

人々をさらに安心させるのか、さらに心配させるのか、よくわからない記事になってしまいましたが、これからも愉快な人生の旅を続けるべく、変なところで死なないようにできることはしていきます。アドバイスがあればぜひコメントくださいね。

思ったこと

Comments
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  1. 結婚しないのが、離婚しないはとても共感!でも、否定するわけではないけど夢がないという考えは共感できないな。結婚に時間を費やしたり、振り回されない分違うことに時間が費やせるじゃん😀安全、安定って何を基準にすればいいかわかんないよね😅

  2. Mikaさん、まあ結局、自分にとって一番大切なことが何か(ここで言えば命!)そしてそれが奪われないようにすること、目の前のことに紛らわされて一番大事なものを失わないように選択して、考えることが、旅の安全だよねって話ですね!;P

地球“借り”暮らし日記
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