カイロで窓拭き、そしてパン売り

エジプトにやってきてまだ2日目、カイロの中心地で、窓拭きをしている人をみた。

暇人なのんびり暮らしている私は、その場に立ち止まり、15分ほど、銀行の建物に宙吊りになって窓拭きをする彼を、うらやましそうに眺めていた。平日の昼間と言えど、カイロの中心地では私同様に予定なくフラフラしている人がたくさんいる。その中でも、多くの観光客が渡り慣れない、車の絶えない交差点を渡るのを手伝いつつ、たくみに話しかける客引き達がいる。彼らは嘘か本当か、「日本人の彼女がいた」などといって日本語でフレンドリーに挨拶してきたり、「オーストリアに住んでいるけど今はバケーションで帰ってきている」なんて言ってドイツ語で冗談を言って来たりし、その後「弟の土産屋を紹介するから」などと言って客引きする。忙しい観光客からしたら鬱陶しいかもしれないが、時間がある時には話し込んでみたら案外面白かったりする。

さて、あまりにも長い間銀行を眺める私に気がつき、流石に不思議に思ったのか、さっき近くの交差点で話しかけてきた客引きが、「何しているの?」とアメリカ・アクセントの綺麗な英語で話しかけてきた。わたしが、「東京で窓拭きをしていたことがあるので、懐かしくて」と言うと、窓拭きのお兄さんにアラビア語で話しかけ、いつの間にか通訳になってくれた。窓拭きのお兄さんに、「日本でも同じ道具で窓拭きをしているのか、給料はいくらくらいか」などとひたすら質問され、私も色々質問していると、お兄さんが、「窓拭きたいか?」と言う。そんなわけで、お兄さんと一緒に銀行の窓拭きをした。

お兄さんはフリーランスの窓拭きで、自分で商店やビルに足を運び営業をし、窓拭きをしているという。給料は1ヶ月で2000〜3000EGP(エジプト・ポンド)。日本円にして、約14000円〜21000円にしかならない。結婚するまで親と暮らすことが前提のこの国であってこそ、家賃や食費の支払いが必要ないため、なんとか生活できるが、家族が突然怪我や病気でもしたら、泣き寝入りするほかない。また、結婚するのには通常、男性側が家を購入し、新生活準備を整えることが前提になっており、大きな結婚式など何かとお金の必要なこの国である。外国人女性がエジプトでやたらとモテる理由の一つが、まとまった資金が用意できなくても結婚できるチャンスがあることは確かである。

さて、話が行ったり来たりするが、あの窓拭きから3ヶ月が経った今、今度はようやく自分の言葉を少しずつ紡ぎ出せるようになってきたアラビア語の練習のため、ひょんなことから、近所のパン屋の手伝いを始めた。パン屋はカイロの中でも大使館などが多く立ち並ぶ地域にあり、外国人も多く暮らす、いわば麻布や六本木のような場所にある。パンの値段もヨーロッパに引けを取らない価格設定で、クロワッサン1つで、朝ご飯屋台なら家族3〜4人がお腹いっぱい食べられるくらいの値段である。なんとも複雑な気持ちになりながら、アラビア語の実践練習の場になると思い手伝い始めたパン屋であるが、お客さんの半分は外国人。評判の良いクロワッサンやバゲットを買いにフランス人のお客さんが多く訪れたり、英語やフランス語、スペイン語、頭の中がいろいろな言語でごちゃごちゃになりながら、時たまアラビア語で接客しては、定形外の質問をされると全く対応できず、慌てる始末である。私のアラビア語は、まだまだ、ノビシロがたくさんあるのである。むしろノビシロしかない。

以前、言語学びに関する記事を書いたこともあったが、アラビア語を学んで改めて思うのが、どんな言葉も血の滲むような地味な繰り返し作業、そして膨大な時間と労力を費やすしかないと言うことである。2ヶ月くらい前、超基本の動詞が20個くらい載った表を作成し、「これを全部覚えればめっちゃ色々なこと言えるようになる!」とワクワクした日があったのを覚えてる。今となっては、毎日当たり前に使っている動詞達である。また、最近では、「パン屋で好みを聞いておすすめをするの巻」や「レーシック手術を受けるの巻」「せっかく買った猫の餌、猫が気に入らず、空腹で吐いたので、ダメ元で交換してもらえるか聞いてみるの巻」「買い物をした店でなぜかお金を払い忘れたので、後日訪れてお金を払うの巻」「住み始めたアパートの電気料金に謎の項目があり、管理人さんや電気会社に問い合わせるの巻」などなど、色々な異なるシチュエーションでアラビア語を使う機会があり、その度に新しい単語や表現を学んでいる。「焦らず、ちょっとずつ、着実に」、と自分に言い聞かせながら、この美しい言語の魅力にどっぷり浸かっている毎日である。

あとがき

お金のこと、言語のこと、私の近況など、全然まとまりのない記事になりました。
記事を書きながら、以前投稿した「窓拭き職人への道」を読んだら、締めくくりに「またいつか、大きな街に暮らすことがあったら、窓ふきがしたい。」と書いてあって、「あの記事を書いた半年前の段階ではカイロで窓拭き、想像していなかったけれど、うまいこと伏線回収したなぁ」、なんてしみじみ振り返った次第でございます。

やってみたこと

Comments
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  1. 窓拭きって足場のある箱みたいなやつに入って作業するのかと思ってたら、こんなふうにクライミングスタイル?でやるもんなんやな〜!すごい!
    さらさの語学への努力を知ると、英語すらまだまだな私は頑張らなきゃ!と励みになります!

地球“借り”暮らし日記
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